いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
翌日、ひかりは兄の企てばかりに気を取られていた。
美加と由紀が昨日の話で――主にイケメンズの話で――盛り上がり、「勇」と言う名前が発せられたときにはハッとして、会話を2人がピタッと止めて、顔をこわばらせるほど険しい表情になった。
ひかりは午後展開されるだろう勇への暴行のことばかり考えていた。
つい勝子に目をやってしまう。
朝から最後のHRの時まで。
そうして視線を送り続けて、とうとう勝子と目が合った。
終了のベルが鳴り、リュックに教科書やノートやペン入れなどをぶちこんで席を立った勝子がひかりのもとにまっすぐやってきたのは、ひかりが1日中ちらちら見ていたことに気づいていたからだろう。
案の定、光の机の前に立つと、座ったままのひかりを見下ろし言った。
「ずっと私を見ていたけど、なにか言いたいことがあるならどうぞ」
相変わらず無愛想に。
ひかりは勝子を見上げたが、わずかに残るためらいによってすぐには言葉がでてこなかった。
けれどひかりはこの機会を――勝子に話せる機会を待っていたのだ。
だから1日中勝子に視線を送り続けたのだ。
気づいてほしくて。
なんとかしたくて。
そこまで気持ちの整理がつくと、ひかりは兄の計画をばらす覚悟を決めた。
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