いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
脱力したような目をただ机に落として、ひかりは動けないでいた。
周りで様子をうかがっていた生徒たちはそんなひかりを哀れむように、またはいい気味だというように十分観察したあとは、誰もひかりに声をかけることなく、何事もなかったように教室を出ていった。
昨日の一件で勝子のファンとなった高木さんは昨日頑張りすぎたのか、急な発熱で学校を休んでおり、残念ながら勝子とひかりのバトルを見ることはできなかった。
もしこの場にいたらまた拍手を送ったかもしれないし、勝子の後を追って行ったかもしれない。

「ひかり、大丈夫?」
由貴がうつむくひかりをのぞきこむ。
返事をせず、ひかりは机を見ているだけだ。
いや何も見てはいない。
ただ目を落としている先が机だというだけで。
「ねえ、ひかりの兄貴、勇を襲わせようとしてるの? 」
と、美加は光の状態よりもとにかく一番気になることをたずねた。
それでもひかりがだまっていると「ねえ、まさか殺しちゃったりしないよね? ねえ、どうしてそこまでするの?」と質問を重ねた。
非難を混ぜながら。
「うるさいわね! 私がやったんじゃないもの。知らないわよ!」

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