いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
「遅かったね」
勝子はローファーの靴底を微かに響かせ、コンクリートで囲まれた駐車場の真ん中に歩み出ていった。
冷たく乾いた風景に、不思議と制服姿の勝子がマッチしていたのは、勝子の表情もまた冷たく乾いていたせいだろう。
「お前、なんでいるんだよ……」
勇が目を見張る。
「迎えに来たの。今日こそは稽古に出なくちゃ」
「バカ、早く帰れ! なんで来たんだよ」
「だから迎えに来たっていってるじゃない」
勇と勝子のやりとりに、リーダーの男が「へえー、彼女可愛いのに怖いもの知らずだね。それともこいつが言うように、バカ?」と、笑って勝子に近づいた。
「勇を放してくれる? 放してくれないなら力ずくで連れて帰るけど。ちなみに私、あなたほど怖いもの知らずでもバカでもないから」
リーダーの男が細く整えた眉をひそめる。
「彼女、面白いこと言うじゃん。そんじゃ君の方からお仕置きするか。こいつの前でいいことしてやるよ」
下卑た笑いを浮かべ、勇に目を向けた。
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