いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
実は縛られた勇の姿を見てすぐに、勝子は警察に通報していたのだ。
３人なら一人で倒せるとも思ったが、縛られて自由が利かない勇が危険な目に遭うのを恐れてのことだ。

事情徴収などに時間がかかり、昨日同様すっかり夕暮れになった道を2人並んで歩く。
勇はずっとしょぼくれている。
「勝子、ごめん」
「何が？」
「こんなことに巻き込んじゃって」
「巻き込んだのは私で巻き込まれたのは勇じゃない。私の方こそごめん」
立ち止まり勇に向いた勝子の髪を風が揺らした。
申し訳なさそうに地面に視線を落とす勇の手を取り、勝子はごめんねともう一度謝り、でも無事でよかったと微笑んだ。
勇は顔を上げ、勝子の額に引かれた傷にそっと指をふれる。
「痛い？　大事な顔に傷つけた」
「大丈夫。痛くないし勇のせいじゃないもの。不覚にもちょっと刃との間合いがずれちゃったのよね」
不服そうに勝子はきゅっと口を結んだ。
「けど、また強くなったな。勝子は俺が守ってやるなんて言っておきながら俺が守られてるってどーよ」
冗談ぽく言ってみたけどそれは本心で、自分のふがいなさに勇はうなだれた。
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