いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
第5章 小さな世界の終わりまで
勇が拉致された事件の後、勝子を取り巻く空気が変わった。
クラスで権力を持っていたひかりが今は教室でひとりぽつんとしている。
事件を機に美佳と由紀はひかりの子分をやめ、ひかりはハブられる側になった。
これまで観覧車のてっぺんにいたはずがぐるりと落下し下で揺れている。
くだらなくてあっけないパワーゲーム。
力を急に失ったいじめの姫は、言葉も発せず一気に色あせた。
一方ひかりとつるむのやめた美加と由紀はそれまでのいざこざは何もなかったかのように、昼休みになるとやけにほがらかに勝子の席に近づいてきて、仲の良い友達のように話しかけてきた。
髪からコンディショナーなのかスタイリング剤なのか、フローラルな香りを振りまいて。
「ねえ、あなた、あの勇君て男の子と仲がいいのよね?」
返事はせずに、勝子は椅子に座ったまま2人を見上げ、ついでに斜め後ろのひかりを見やった。
彼女は机にうつ伏せて寝ていた。
自分の世界をやり過ごすのに簡単で有効な方法。
たぶん目を閉じているだけだろう。
この距離なら美加たちの声は聞こえているはずだ。
もはやひかりの存在など気にとめないほどはっきりした声が。
クラスで権力を持っていたひかりが今は教室でひとりぽつんとしている。
事件を機に美佳と由紀はひかりの子分をやめ、ひかりはハブられる側になった。
これまで観覧車のてっぺんにいたはずがぐるりと落下し下で揺れている。
くだらなくてあっけないパワーゲーム。
力を急に失ったいじめの姫は、言葉も発せず一気に色あせた。
一方ひかりとつるむのやめた美加と由紀はそれまでのいざこざは何もなかったかのように、昼休みになるとやけにほがらかに勝子の席に近づいてきて、仲の良い友達のように話しかけてきた。
髪からコンディショナーなのかスタイリング剤なのか、フローラルな香りを振りまいて。
「ねえ、あなた、あの勇君て男の子と仲がいいのよね?」
返事はせずに、勝子は椅子に座ったまま2人を見上げ、ついでに斜め後ろのひかりを見やった。
彼女は机にうつ伏せて寝ていた。
自分の世界をやり過ごすのに簡単で有効な方法。
たぶん目を閉じているだけだろう。
この距離なら美加たちの声は聞こえているはずだ。
もはやひかりの存在など気にとめないほどはっきりした声が。