いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
クラスにわずか35人の、わずか3年間の世界。
傷ついたり傷つけたり、楽しかったりつらかったり、幸せだったり死にたかったり、天国だったり地獄だったり、裏切ったり裏切られたり、憎んだり憎まれたり。
あきらめとか我慢が足りなくて、思慮浅い思春期の十代はこんなちっぽけな世界にすべてをからめ取られてしまう。
俯瞰して眺めればどうってことなくて、どうにでもなるはずなのに。

腕時計を見て勝子は弁当箱と参考書をリュックにしまう。
立ち上がりプリーツスカートをはらって伸びをする。
近くの木の上で大きなカラスが鳴いた。
どうやら勝子を警戒しているらしい。
晴天続きで地面が乾き、歩くと細かい砂埃が舞い上がる。

あと570日くらい? 勝子がこの世界――高校という世界――の終了をカウントしたところで5時限目の呼び鈴が鳴った。
乾いた地面を勢いよく蹴りあげ、勝子は黄土色の土埃を舞い上げながら教室へと走った。

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