いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
「どうしてそう思うんだ?」
「勝子と強さんが実の兄妹ではないってこと? それとも強さんが勝子を好きだってこと?」
「両方」
「まず、強さんが勝子の兄貴になる前から俺は勝子を知っていたから」
勇は4歳のときから忘れることのない幼い時の自分と勝子との思い出を語った。

勝子の父親は生前、勇の父親と同じ会社で働いていて、同じ社宅に住んでいた。
同期入社で仲の良かった2人は家族ぐるみの付き合いをしていてよく一緒に遊びにでかけたし、母親たちはちょくちょくお互いの子供を預かり合っていた。
一人っ子の勇は勝子が家にくると妹ができたようで嬉しくて、ずっと勝子の遊び相手をし、勝子が帰っていくときには寂しすぎてめそめそ泣くこともあった。
男の子なのに。
勝子一家の事件について勇は、彼女の両親は交通事故でなくなったと説明された。
勝子はよその家に引きとられるまでの数週間、勇の家で預かっていた。
いつまでたっても両親が姿を見せないことが怖かったのだろう。
言葉が増えてきた勝子は思いついたように「かあかは? とーとは?」と勇たちにたずね、不安な顔で泣きだす様子はいたたまれなかった。
勇は、勝子はこのままずっとうちにいるのだろうと思い始めたころ、やさしそうな夫婦が勝子を迎えに来た。
勝子は行きたくないとぐずり、勝子に新しい家族ができると前日に聞かされていた勇も勝子の手を離せずぐずって泣いた。
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