いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
「ほらね」
ひかりが乱暴に腕を振りほどいた。
「ふざけんなよ」と胸の中でぼやき、勝子が自分の席に戻ろうとしたとき、山城さんが勝子の手首をつかみ、消え入りそうな小さい声で話しかけてきた。
「有難う。でも気をつけて。あの人たち、次はあなたのことを標的にすると思う。私をかばっちゃったから――」
机の上にぽたぽたと水滴が落ちる。
俯いたまま肩を震わせている山城さんの表情は真っ黒な剛毛に覆われて見えない。
「大丈夫。私、名前の通り負けないから」
と、最後まで言い終わらないうちに、山城さんががばっと顔を上げた。
「大変、靴……、あなたの靴、きっと捨てられちゃう。早く今から隠しに行って」
どうやらいじめの初段階の項目に、靴隠しが組み込まれているらしい。
その時ピピっという電子音がして、スカートのポケットのスマホをチェックした勝子は教室を見渡し、ひかりたちがいないことを確認する。
「そうみたいね。現在、移動中のようだから、じゃ」
プリーツスカートを翻し、勝子は教室を飛び出した。
ひかりが乱暴に腕を振りほどいた。
「ふざけんなよ」と胸の中でぼやき、勝子が自分の席に戻ろうとしたとき、山城さんが勝子の手首をつかみ、消え入りそうな小さい声で話しかけてきた。
「有難う。でも気をつけて。あの人たち、次はあなたのことを標的にすると思う。私をかばっちゃったから――」
机の上にぽたぽたと水滴が落ちる。
俯いたまま肩を震わせている山城さんの表情は真っ黒な剛毛に覆われて見えない。
「大丈夫。私、名前の通り負けないから」
と、最後まで言い終わらないうちに、山城さんががばっと顔を上げた。
「大変、靴……、あなたの靴、きっと捨てられちゃう。早く今から隠しに行って」
どうやらいじめの初段階の項目に、靴隠しが組み込まれているらしい。
その時ピピっという電子音がして、スカートのポケットのスマホをチェックした勝子は教室を見渡し、ひかりたちがいないことを確認する。
「そうみたいね。現在、移動中のようだから、じゃ」
プリーツスカートを翻し、勝子は教室を飛び出した。