いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
「なんでここに……」
右手に勝子の靴を下げたひかりは眉を寄せる。
「なんでって、その靴を返してもらいに。私の靴をなんであなたが持っているのか、私の方が聞きたい。売るなら窃盗罪で訴えるけど――ていうか、もう窃盗未遂か」
勝子が一歩、ひかりに近づく。
それに伴い、ひかりは1歩後ずさる。
「ど、どうして……」
「どうして? どうして私の靴がここにあるのがわかったかってこと? それはねーー」
ひかりたち3人が勝子の顔をじっと見つめて、その先を待つ。
その間にゆるやかな風が吹き、裏庭の草木の葉を揺らした。
まだ暑いけれど熱気は薄らぎ、乾いた秋のにおいがした。
まさか靴にGPSを仕込んであるなんて種明かしはせず、勝子は「秘密」と答え、もう一歩足を踏み出しひかりの手からモカシンを取りあげた。
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