いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
HRでは誰も昼時間に起きたもめ事に触れることはなく、勝子は担任から「何か困ったことはないか」と聞かれたが、「特には」と答えておいた。
HRで苦情を申し立てて解決された覚えがないどころか、ろくな結果になったことがないからだ。
大した連絡事項もなくHRはすぐに終わり、起立・礼の掛け声に皆が適当に頭を下げると、教室はガタガタと帰り支度の音でいっぱいになった。
山城さんが逃げるようにいち早く教室を飛び出していった。
勝子はリュックにしまったモカシンを取出し、面倒なのでその場で履き替え、かわりに上履きをリュックにしまって教室を出た。
下駄箱の前には山城さんの後を追うように教室を出ていったはずのひかりたちがいて、勝子を見ると互いに目配せしながらほくそ笑んだ。
その様子を視界の端に捉えながら、勝子はそのまま校舎をあとにした。
―――やはりちょっと笑みを浮かべながら。
実のところ勝子はウキウキしていた。
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