いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
夕食後、リビングのソファに座り、勝子は山城さんからもらった紙を再び開いた。
「なに、それ?」
父と母と強がすかさず指差してくる。
「いじめられていた山城さんがくれたの。これから私に起こりうるいじめの内容――無視されて落書きされて、物を盗まれて、暴力などなど……――注意してね、って」
家族皆の表情がこわばる。
「見せろ」
勝子の手から剛は紙をひったくり、随分と怖い顔をして中身を熟読すると「明日校長に会いに行く」と言い出した。
「え、やめてよ!」
勝子が慌てて剛の手から紙を取り返す。
「何かあってからじゃ遅い。というか、こんな奴らと一緒に勉強できるか!」
「お父さん、勉強するのは私だから」
「なおさらだ!」
すごい剣幕だ。
「大丈夫だよ。もう何度も経験ずみだから全部、対応できるもの。無視とか落書きはべつにきにしなけりゃいいし、私物はすべて持ち歩く。暴力で負けることはないだろうし、だからゆすられることもない。他にはどんなことがあるのかなあ。とりあえず明日は落書きと無視ってとこかな」
「暴力で負けることはない、なんて過信するな。一人に多勢じゃかなわないだろうし、不意打ちを食らったら対抗できないだろう」
心配のあまり剛が厳しい口調で言うが、勝子は「大丈夫だってば」と軽く流して逃げるように自分の部屋に戻って行った。
「なに、それ?」
父と母と強がすかさず指差してくる。
「いじめられていた山城さんがくれたの。これから私に起こりうるいじめの内容――無視されて落書きされて、物を盗まれて、暴力などなど……――注意してね、って」
家族皆の表情がこわばる。
「見せろ」
勝子の手から剛は紙をひったくり、随分と怖い顔をして中身を熟読すると「明日校長に会いに行く」と言い出した。
「え、やめてよ!」
勝子が慌てて剛の手から紙を取り返す。
「何かあってからじゃ遅い。というか、こんな奴らと一緒に勉強できるか!」
「お父さん、勉強するのは私だから」
「なおさらだ!」
すごい剣幕だ。
「大丈夫だよ。もう何度も経験ずみだから全部、対応できるもの。無視とか落書きはべつにきにしなけりゃいいし、私物はすべて持ち歩く。暴力で負けることはないだろうし、だからゆすられることもない。他にはどんなことがあるのかなあ。とりあえず明日は落書きと無視ってとこかな」
「暴力で負けることはない、なんて過信するな。一人に多勢じゃかなわないだろうし、不意打ちを食らったら対抗できないだろう」
心配のあまり剛が厳しい口調で言うが、勝子は「大丈夫だってば」と軽く流して逃げるように自分の部屋に戻って行った。