いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
勝子の父親――三田守――は、真田剛の学生時代からの親友だ。
資産家のボンボンだった守は家が進めていた縁談を断り、勝子の母と駆け落ち同然に結婚し、勘当された。
勝子の母――綾子――は両親を早くに亡くし、保護施設で育った。
つまり家柄が守の家族に受け入れられなかったのだ。
実にくだらない。だから守は家も資産も捨てた。
そんな事情ゆえ、守と綾子が死んでも勝子を引き取りたいという親族はだれもいなかった。
それを知った剛とミキは、勝子を養女にしたいと申し出、それはすんなり受け入れられた。

事件直後はとりあえず守夫婦同じ社宅に住み、親しくしていた家族が勝子を見てくれていた。
勝子はその家の、少し年上の男の子によくなついていて、剛とミキが勝子を迎えに行った際には離れるのを嫌がって泣いた。
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