いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
「あ、あの――」
太い眉を下げ、典子は困った顔をした。
「あ、俺は勝子の友だちで神谷勇です」
「あ、あの、私は山城典子です……あの……真田さん、私をあの3人からかばったせいでうらまれちゃって……。私は大丈夫なので、真田さんを追いかけてください」
男子と話すことに慣れていない典子は必要以上におどおどしながら頭を下げた。
「いや、多分大丈夫。あいつ、足速いし強いし……」
背の高い勇が典子を見下ろしにっこり笑う。
典子はぽっと顔に血が上るのを感じ、とまどった。

何人かのクラスメートが、典子と背が高くイケメンの男性が並ぶ姿をあからさまにジロジロと見て、こそこそと何か言いあって通り過ぎていく。
通り過ぎてもまだ納得できないというように、しつこく振り向いてまで2人の姿を再確認する人もいる。
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