いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
「あのね、それ自分のせいでしょ、謝るのはそっちの方だし」
あきれた勝子の声に美加と由貴はまだ何か言い返そうと勝子を睨んだが、「もうわかったから手を放して」という、今まで聞いたことのないひかりの細い声にだまった。
「もう私にかまわない?」
ひかりが苦しそうに仕方なく頷く。
「山城さんにも?」
「わかったわよ……早く放してよ!」
声を低く振り絞る。
よかったと笑い、勝子はひかりの手を放してやった。
ひかりには怒りと屈辱の、美加と由貴には怯えの表情が浮かんだが、勝子には知ったこっちゃない。
腕時計に目をやると「あ、やばい」とつぶやいて、今度こそいつもの速度、3人が追い付けない速さで掛け出した。
< 45 / 125 >

この作品をシェア

pagetop