いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー

「真田勝子です」、と自己紹介をしたその日。
教室でこちらを見つめる女子の瞳は72。つまり36名。
「道徳教育を重んじる」という学校の理念がきちんと浸透しているかのように、一見誰もがみな清く礼儀正しくっていう雰囲気だった。
でも、もう昼には気づいてしまった。

「またか……」
心の中で勝子は舌打ちをする。そして小さな顎を少しだけ動かして、左前方の席に動かした。その拍子に肩すれすれでさっくり切りそろえた髪がさらりと揺れた。

「またか」
今度は小さく声にだし、窓際の前から3番目の席に座る生徒と、それを囲む女子2人をおもむろに見た。