いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー

約1時間半の稽古が終わった後、勝子は勇と一緒に強の部屋に呼ばれた。
8畳の洋間にはベッドとデスクとクローゼットと本棚。
大きめのデスクにはノートブックが2台、それとコーヒーカップと本が数冊のっている。
カップの中には飲みかけのコーヒーが入っているのだろう。
香ばしい匂わずかに漂っている。
強はベッドに腰掛け、勇はデスクの前の椅子を引きだして座った。
目の前に立った勝子に勇が「よければ俺の膝の上、特等席に座ってもいいぞ」と腿を叩いて両腕を広げると、強がわざわざ立ち上がって勇の頭をはたいた。
パンとかわいた音が響いた。
「いってー。強さん、本気でぶたないでよ」

勇と強は仲がよい。
もともと勇は勝子と小学生の時に知り合い、超武道塾に通い始めたことをきっかけに親しくなった。
もちろん勝子の家族と親しくなったのも、超武道塾に通うようになったからだ。
勇と強は塾では師弟の関係だが、塾以外では闊達で明るい勇が年上のクールな強になつき、今では兄弟のように仲が良い。
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