いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
「で、なにか大事な話?」
勝子もベッドの上に腰かける。
「ちょっとさ、嫌な感じなんだよ」と、勇が怪談話でもするかのように、真面目な顔で前のめりになった。
「嫌な感じ?」
「うん。ゼミに玉木浩二っていう男がいてさ。そいつが『妹が転校生にいじめられてるから、仕返ししてやるんだ』って言って、ヒヒヒって笑うわけよ。不気味で気になって調べたら、奴は玉木ひかりの兄貴だったってわけ」
「つまり、仕返しされる転校生って私のことなのね。いじめたんじゃなくて、いじめられたんだとしても」
「だね、多分。で、心配だから強さんに相談したんだ」
ひかりと揉めたことは、勇は山城さんから、強は勝子から昨日聞いて知っていた。
「勇くんの大学、名門校のわりにはアホな人がいるね」
「どこにでも人としてアホなやつはいっぱいいるだろ。勝子の高校だって相当な進学校じゃないか。それにしても兄妹そろってアホとはなあ」
長い脚を投げ出して、勇は前にかがめていた体をそらして伸びをする。
「まさか転校早々にそんなやつとも揉めるなんて……」
ぼそりと強がこぼした。
勝子を心配してつい口を出た言葉だったが、まるで勝子に非があるかのような口ぶりに、勝子はムッとして強を睨んだ。
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