いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
こんな風に勝子が怒る姿を、勇は何度も見ている。
理不尽に誰かが攻撃されているとき
弱いものが理由なく傷つけられているとき
そして、それを許容することに対して――
それは強の方がよく知っているはずなのに、うっかりしたな、と勇は強の様子をうかがう。
「違う……そうじゃないよ」
「じゃあ、どういうこと? わかりやすく説明して」
こうなるともう勝子は止まらない。理屈で明快に説明できなければ納得しないし、確かに勝子は間違っていない。原因はひかりにある。
「悪かった。訂正する。ただ玉木こうじはやっかいそうだから、できるだけ妹のひかりにもかかわるな」
なるべく勝子の気持ちを逆なでしないよう、強は言ったつもりだったが、勝子の緊張を和らげることはできなかった。
ただ怒りの視線が冷めたまなざしに変わっただけだった。
「私は意味もなく自分から手出しはしないよ。手出しされても必要以上にやり返すこともない。ただ必要があれば、やる。それだけ」
そんな目で見るなよ、と思うと同時に、強はこの強くて真っ直ぐな勝子の目が好きだった。
勇が短く息を吐く。
強は勝子の視線を受け止めながら思う。
勝子を傷つける奴は俺が許さない――。
そしてその思いを口にしようとしたとき――わかった、お前は俺が――と言いかけて、けれど先に言葉を放ったのは勇だった。
癪に障るほど優しい笑顔を勝子に向けて。
「大丈夫だよ。勝子は俺が守ってやるからさ」
理不尽に誰かが攻撃されているとき
弱いものが理由なく傷つけられているとき
そして、それを許容することに対して――
それは強の方がよく知っているはずなのに、うっかりしたな、と勇は強の様子をうかがう。
「違う……そうじゃないよ」
「じゃあ、どういうこと? わかりやすく説明して」
こうなるともう勝子は止まらない。理屈で明快に説明できなければ納得しないし、確かに勝子は間違っていない。原因はひかりにある。
「悪かった。訂正する。ただ玉木こうじはやっかいそうだから、できるだけ妹のひかりにもかかわるな」
なるべく勝子の気持ちを逆なでしないよう、強は言ったつもりだったが、勝子の緊張を和らげることはできなかった。
ただ怒りの視線が冷めたまなざしに変わっただけだった。
「私は意味もなく自分から手出しはしないよ。手出しされても必要以上にやり返すこともない。ただ必要があれば、やる。それだけ」
そんな目で見るなよ、と思うと同時に、強はこの強くて真っ直ぐな勝子の目が好きだった。
勇が短く息を吐く。
強は勝子の視線を受け止めながら思う。
勝子を傷つける奴は俺が許さない――。
そしてその思いを口にしようとしたとき――わかった、お前は俺が――と言いかけて、けれど先に言葉を放ったのは勇だった。
癪に障るほど優しい笑顔を勝子に向けて。
「大丈夫だよ。勝子は俺が守ってやるからさ」