いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
幼くして一人ぼっちになってしまった勝子は、真田家にとって大切な女の子だった。
決して悲しい目などに合わせてはいけない。
だから強はじい様の言葉に素直に返事をした。
「はい」
それから立ち上がり道着を整えると、心を新たに決めたのだ。

もっともっと強くなろう。
勝子を守れるように。
自分のために小さい体でじい様に体当たりしてくれた勝子を、ずっとずっと自分が守っていこうと。

それから高校生になって強は改めて勝子の両親が巻き込まれた悲惨な事件の真相を知り、「自分が勝子を守る」という気持ちは、より一層深くなった。

兄として――このときはまだ――そう思っていた。
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