いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
彼らは佐々木君と一緒に目立っていた僕が気に入らなかったのだろう。
きっと佐々木君のおかげで注目されやがって、みたいな歪んだ感情を持っていたに違いない。
だから佐々木君がいなくなったことをこれ幸いと嫌がらせがはじまったのだ。
クラス替えをして始めのうちは、佐々木君と僕はお互いのクラスを頻繁に行き来して一緒につるんでいたけど、だんだんと新しいクラスに馴染んでくるうちにそんなこともなくなった。
そしてそれを見計らったように、奴らの嫌がらせがはじまったのだ。
でも新しい友だちと楽しく過ごしていたし、悪口とかいたずら書きとか、その程度はあまり気にしないでいた。
だけど突然仲の良かった友だちからも仲間外れにされた。
やつらから意味なくボールをぶつけられたり、柔道の練習などと言われて暴力を振るわれたり、まだ新しいノートを落書きでぐちゃぐちゃにされたり、筆箱をカッターで切られたりした。
母親に心配をかけないように家に戻ると服の汚れを落とし、壊された文具は隠し、あざは見えないように気をつけ、いつも変わらず明るく振る舞った。
都合のよいことに仕事でほとんど家にいない母親は、勇の洋服の不自然な綻びや体に残る無数の小さなあざに気づくこともなかった。
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