いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
浩二は興味が失せた様子をあからさまにして、またソファに寝転がった。

外出時のひかりのルックスはまあまあだ。
兄のひいき目で75~80点というところか。
しかしすっぴんのぼんやりした顔は頑張っても65点。
目の大きさが倍ほどに違う。
よくぞここまで化粧映えするものだと感心し、「化粧をした女の顔は信じられない」ということを、浩二は妹から学んでいる。
そんなひかりが自分より可愛くないというのなら、それは大したルックスではないということだ。
と、テレビに目をやりながらも浩二がそんな風に考えていると「でももしかしたら、ああいうの、きれいっていう男もいるかもしれない」とひかりが言い、その言葉に浩二は再び体を起こした。

「その子きれいなのかよ? 化粧で実物より3倍の目になってたりすんじゃないのかよ」

どうして男はこうも「かわいい」「きれい」が好きなのか。
だから少しでも見た目をよくしたくて女子はメークに燃えるのに、「けばい女は嫌」だとか「素顔の君が好き」とか、好き放題ほざく。
そんなアホ男代表のような浩二にひかりは兄ながらげんなりする。

「してない。全然オシャレに興味なさそうだし」

化粧にもおしゃれにも興味なさそう――制服だし――というのは本当だけど、それでもなんかクールな雰囲気を身にまとっている、というのは言わないでおいた。

「そうか」
浩二はあまり気のないふりをして、実はテンションが上がっていた。
すっぴんできれいで勝ち気な女子高生。いいじゃん、いいじゃん、いいじゃん!

「ねえ、お兄ちゃん、その子にちょっと仕返ししたいんだけど手伝ってくれない?」
こうじは妹の仕返しなんぞには興味がなかったが、その「すっぴんで、きれいな女子高生」を見たいがために「いいよ」と引き受けることにした。

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