いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
桜山公園は大きな丘状になっていて、その中に広場や花壇や小さなグランドなどが設置されている。
入ってすぐの場所に小さな子供向けの遊具があるが、今日は誰もいず、のんびり西日に照らされているだけだ。
勝子がゆっくりと園内を見て歩いている間に彼女が追いついたので、「どこにいるの?」と尋ねたが、ぜいぜいと息を切らしているだけだ。
勝子は園内を見渡すが玉木たちの姿は見えない。
「私もどこにいるかは聞いてないの」
息が整ったらしい彼女がようやく答えた。
一緒に園内に目を走らせていると、上の方から声がした。
「こっちよ」
見上げると、緩いスロープを上った先にある、小さなロッジ風の休憩場の入り口に光が腕組みをして立っていた。それからすぐに美加と由紀、そして大学生くらいの男が一緒に休憩所から出てきた。
けれど休憩所の素通しの大きな窓枠の中に人がいるのがうかがえる。
とっさに頭に浮かんだのは、昨晩、強たちとの話に出てきた「どうしようもない」ひかりの兄・浩二だった。

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