いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
彼の顔を見た途端、面倒なことになりそうな気がした。
「あなた、帰ってもいいよ」
逃げるにしても戦うにしてもひとりの方が動きやすい。
そう考えて勝子は、ひどく緊張した面持ちの彼女に声をかけたが、彼女は首を振り、「行こう」と先を促した。

光のもとに着くと、「遅かったじゃない」と、腕組みをしたまま偉そうに言う。
美加と由紀が勝子の後ろにいる彼女を見ると「高木、なんであんたまで来たの? 帰んなよ」と顎をしゃくった。
――彼女の名前は髙木さんだということが判明した――
「山城さんは?」
遅いも何もあなたと約束したわけでもないし、と思いながら勝子が尋ねると、「山城なんていないよ」と、美加がしらっと答える。
「山城さんと一緒にいるって言ったじゃない!」と、うろたえ声を荒げたのは高木さんだ。
「そんなこと、言ってないけどお」
目をわざとらしく大きく開き、ひかりがおどけたような顔を作った。
「やだ、高木ったら山城がいるなんて嘘ついて、こいつを連れてきたの? 山城なんてさっさと帰っていったじゃん」
みゆきが薄ら笑いを浮かべる。

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