いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
美加たちが高木さんの腕を放す。
捉えられていた腕が自由になって、高木さんはとっととこの場から逃げていくとみんな思っていた。
だから「私も行くわ」と、まるで覚悟を決めて戦にでもいくような険しい顔で高木さんが言った時には他全員が「え?」っとなった。
「どうして?」、と勝子がたずねたところで、浩二のスマホから着信メロディが流れた。
パンツのポケットからスマホを取り出し浩二は「はいはい~、あー、これから向かうところ。五反田のカラオケ屋の前で待ちあわっせっつーことで。15分くらいかなあ」と能天気な声で話し、その隙に高木さんがささっと勝子のもとにきて「もし何かあったら、証人がいた方がいいと思うの」と、険しい表情のまま耳打ちした。
もし何かあったら証人って、彼女はなんか事件が起こることを想定しているわけか。
胡乱な目を高木さんに向けると、髙木さんは「任せて」とばかりにゆっくり頷いた。
明らかにちょっと張り切っている。
< 79 / 125 >

この作品をシェア

pagetop