いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
浩二の車で五反田のカラオケ屋に移動した。
公園の駐車場に車を置いてあるなら始めから駐車場におびき出してくれた方が効率的だったにと思うが、駐車場でごちゃごちゃ言い争えば目立つとでも考えたのだろう。
赤いステーションワゴンの後ろのシートには美加と由貴、そして高木さんに続いて勝子は仕方なく乗り込んだ。
稽古に遅れることばかりを心配しながら。

コインパーキングに車を駐車し、すぐそばにあるカラオケボックスに向かっていくと、入り口の前に浩二と同じ年頃の若い男性の姿が並んで立っているのが見えた。
「お兄ちゃん、3人いるけどあの人たち?」
光が入り口に向けて指を指す。
あれ? と、浩二が首を傾げる。
「なんか、みんなカッコよくない?」
美加と由貴が興奮してお互いの腕を叩きあう。

「おい、彼らおまえの友達?」
女子高生を4人も従えカラオケボックスの前に到着した浩二は、3人の男のうちの一人――浩二と同じ大学で同じゼミを取っている――に声をかけた。
「そんなところ」と答えた彼もほかの2人も背が高く、鍛えられた体で立ち姿もシュッとしている。
妹のひかりはもちろんのこと、ほかの女子の視線――勝子以外の――がすべてそちらに吸い込まれ、浩二はまさかの自分が一番イケてない男となっている状況に不快になった。
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