いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
そして思わず「わ、私は別に何も――」と自分をかばいかけたが、その後の言葉が続かなかった。
「勝子は無愛想だけど、悪い奴じゃないから」
再びにっこりと微笑みをサービスする強に、そばにいた美加と由貴が吸い込まれるように「うん」と頷く。
強はひかりたちとの間に穏やかな空気を作り出すことに成功したが、しかし勝子が惜しむことなくその空気をかき乱した。
「私は無愛想でもないし、悪いやつでもない。悪いのはあなた、よね?」
と、わざわざ「あなた」で区切りをつけて、ひかりを指さし言った。
それも無愛想でもないしと言いながら、とても無愛想に。
勝子の「勝」は、勝ち気の「勝」でもある。
せっかくまとめかけたのにと強は勝子に目をやるが、勝子はさらにひかりたちの前に歩み寄り「それと、私は絶対にあなたたちに負けないから」と宣言した。
ぱちぱちと小さな音が響く。
その音の方角に全員が視線を移す。
髙木さんが胸の前で手を打ち、目のふちをほんのり赤くさせながら、勝子に熱いまなざしを向た。
「私も負けない……」
何に負けないのかはわからないが、とにかく髙木さんもきりりとした瞳でつぶやいた。
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