いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
それに対する勝子の返事はスコンと速球だった。
「いない」
「即答かよ」
勇はあきれたような突っ込みを入れた。けど内心はホッとし喜んでいた。
そこでもう少し探りを入れてみた。
「でもさ、告られたりしたことあるだろ」
「ない」
「え!」
「なんでそんなに驚くの? 何よ、急に」
「いや、お前そんな風でも結構モテそうじゃん」
「そんな風でも、ってどんな風よ。勇君、失礼じゃない?」
「あ、ごめん。ふつーに意外とモテるんじゃないかなあと思って。だからさ、実は彼氏とかいたりして、とか思ったわけ」
また「たり」で「とか」、である。
「そんなのあるわけないじゃない」
「なんで?」
「転校していじめられて、喧嘩して、強くなって、いじめられて、また喧嘩して――そんなことの繰り返し。ここまでそんなんでいっぱい、いっぱいだったもの。誰も信用してなかったし。私ね、親友もできなかったんだよ」
瞳を恥ずかしそうに伏せ「そんな女子、誰も好きにならないよ。もうすっかりひとり慣れ――」と、最後の方は独り言のようにつぶやき、勝子は淡く笑った。
悲しそうでもつらそうでもなかった。
けれど淡々とした横顔が、淡々としていようと横顔が、かえって勇の胸を疼かせた。
「いない」
「即答かよ」
勇はあきれたような突っ込みを入れた。けど内心はホッとし喜んでいた。
そこでもう少し探りを入れてみた。
「でもさ、告られたりしたことあるだろ」
「ない」
「え!」
「なんでそんなに驚くの? 何よ、急に」
「いや、お前そんな風でも結構モテそうじゃん」
「そんな風でも、ってどんな風よ。勇君、失礼じゃない?」
「あ、ごめん。ふつーに意外とモテるんじゃないかなあと思って。だからさ、実は彼氏とかいたりして、とか思ったわけ」
また「たり」で「とか」、である。
「そんなのあるわけないじゃない」
「なんで?」
「転校していじめられて、喧嘩して、強くなって、いじめられて、また喧嘩して――そんなことの繰り返し。ここまでそんなんでいっぱい、いっぱいだったもの。誰も信用してなかったし。私ね、親友もできなかったんだよ」
瞳を恥ずかしそうに伏せ「そんな女子、誰も好きにならないよ。もうすっかりひとり慣れ――」と、最後の方は独り言のようにつぶやき、勝子は淡く笑った。
悲しそうでもつらそうでもなかった。
けれど淡々とした横顔が、淡々としていようと横顔が、かえって勇の胸を疼かせた。