いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
「寂しいこと言うなよ」
勇は立ち止まり、勝子もつられて足を止める。
バイクが通り過ぎる間、勇は勝子を見つめ、それから驚かせないようにそっと抱きしめた。
「俺はずっと勝子を――」
次の言葉がうまく出てこない。
その間、勝子はほんの少しだけ勇の胸に顔をうずめると、有難うと言って体を離した。
「わかってるよ。勇君が私のこと、親友だと思ってくれていることは」
親友か。勝子、わかってないよ、俺のこと――そう思いながら、勇はついでにもう一つの疑念について確認してみることにした。
「あのさ」
「なに?」
「まさか、もしかして……お前、強さんのこと……」
まさかと思いながらも内心びくつきながら勇がたずねようとすると、全部言い終わらないうちに「えっ!」と、勝子が驚いた。
目を見開いて。予想以上に。
「え!」
その勝子のたじろぎぶりに「当たりなのか?」と勇も驚く、というかびびる。
しばし沈黙があり、勝子が先に口を開いた。
「それって、近親相姦てこと? そんなことある訳ないでしょ! 殴るよ」
なぜそこまで話が発展するのかわからないが、勝子は強とそういう関係――つまり一線を越えた関係――つまりつまり深い関係――つまりつまりつまり体の関係なのか、と聞かれたのだと深読みして衝撃を受けたらしい。
< 92 / 125 >

この作品をシェア

pagetop