いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
夕暮れだった空には闇がおり、夜に変わろうとしていた。
ちょうど2人の分かれ道になったので、勇の問いには答えず「じゃあね」と言って、勝子は勇を置いて歩いていった。
街灯に照らされ、ぴたりと寄り添って後ろに伸びていた2つの影が離れて1つになった。

勝子は戸惑っていた。
勇から抱きしめられたこと、そして強のことを好きなのか、と問われたこと。そのどちらにも。
心の中に芽生えていた、けれどまだ存在もあやふやな種。
しっかりとした形もなしていないのに、やっかいそうな気配を発していたから気づかないふりをして、胸の奥に埋めておいた種。
それなのに、「ねえねえ」と突かれ、ぼんやり発芽してしまった気分。
勝子は首を振った。
まだ何も考えたくはない。
誰が好きなのか――なんて。
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