いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
バカか、と光は目の前の兄の顔をしげしげと見る。
自分の彼氏じゃなくても自分を心配して飛んできてくれるような男に何かされたら怒るに決まってるだろ。
それもあの正義感の強い勝子だ。
日本刀を光らせ、仇討ちに駆けつけそうな女ではないか。
ひかりは勇を助けるために刀を携え、険しい顔で風のように切り込んでくる勝子の姿を想像してぷるっと身震いをした。
非現実的だが、そのイメージはとてもリアルだった。
浩二がスマホを取り出しラインを始めた。
すぐにピンと間の抜けた着信音が響く。
書いて送り、ピンと音が鳴り、を繰り返した後で、「これでオッケー」と、浩二はラインのやりとりを終えた。
どういう算段になったのか気になり「どうオッケーなの?」と、ひかりが聞くと、浩二は「10万もとるなんてぼったくりだけど、まあいいか。オッケーってことで」と、ひかりへの返事ではなく独り言のように言ってから、「風呂入ってくるわ」とリビングを出ていった。

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