平凡な人生を歩むにあたって

1歳半〜3歳半

母の都合でこの歳には携帯を常に首から下げていた。

近所の公園で1人夜まで遊んだり、人見知りをしなさすぎたせいで誘拐されかけたり。
まぁ小さな私には仕方がないことだと思う。

この頃は母が常に仕事に出ていた。
九時までには帰ってきていた気がする。
祖母は目が見えないし、祖父は何をしていたのか知らないがあまり家にはいなかった。

祖父は家にいる間は遊んでくれる。
いい人だ。好きだった。
ただ少しカッとなると止められない人で、カップラーメンに水を入れてしまった私に激怒し、小雨の降る冬の夜、外に叩き出された。
それに気づいた前の家のおばさんが、

「家の中にはいれることは出来ないが、ここにいるといい」

と言って雨避けのついたベランダに椅子を出してくれた。
タオルケットをかけてくれ、暖かい飲み物を貰った。
話を聞いてもらい、少し待っていて、と家の中に入っていった。
おばさんが誰かと話す声が聞こえたが、何を言っているのかまでは分からなかった。
このまま家に入れないのか、と泣きそうになっている時、家の玄関が開いた。
祖父だった。
祖父はきょろきょろと辺りを見渡し、私を見つけた。
私は許してくれた、家に帰れる、と思ったが、祖父はさらに怒っていた。
人様の家のベランダに入り込むとは何事だ。
頬を叩かれ、腹を蹴られた。
それを見たおばさんが慌ててかけてきて、事情を説明してくれた。
すると祖父の態度は一転。
にこにこして家に帰ろうと言ってくれた。
私は怖い、痛いよりも先に許してもらえた、という気持ちが強くなった。

帰ってきた母の反応は覚えていない。
私は未だにその時のことを母に話したことはないし、きっと母は知らないのだと思う。
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