青春の蒼い花

会えない日々


私の想いがますます大きくなる一方で


別れは突然に告げられた。




たく兄と全然会わないな〜


そう思う日が多かった。



中学生になってからもたく兄の家にはよく勝手に上がっていた。


でも、ある日、私の母が言ったんだ。



「もう、卓已君の家に行くのはやめなさいね。卓已君は受験生で忙しんだから。」


後日、お母さんに黙ってたく兄の家に行った。


「お邪魔します」とだけ一応言ってから、たく兄の部屋を開けた。


すると、そこにいたのは、熱心に机に向かって勉強をしているたく兄だった。


「おわっ!ビックリした!
なんだ…蒼衣かあ。」


一応言った「お邪魔します」は、一応大きな声で言ったはずだ。

でも、それに気づかないほど集中していたのかな?



「どうした?何かあったのか?」


椅子から下りて、私の方へ歩み寄る。


遊んで欲しかったから
会いたかったから

という願いがあって来たはずなのに


その言葉が出てこなかった。



言えなかった。


「…、何でもないよ!
無くし物しちゃって、たく兄の部屋にあるかなーっと思って来ただけ。でも、無さそうだから帰るね。」


「何を無くしたんだ?一緒に探してやるぞ?」



とっさについた嘘にまで、たく兄は優しくこたえてくれた。


「ううん、いいの。大したものじゃないし。たく兄は勉強頑張ってよ。」


「そうか。わかった。ありがとう。」



私がそう言うと素直に机に向かいなおした。


全く止まらないペンの動き。


真剣な顔でノートに文字を埋めていく姿が年の差を感じさせた。



そして、たく兄が遠くに感じたんだ。

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