青春の蒼い花
「ねえ、高津くんは白石さんと同じクラスなのよね?」
それから先に話しかけてきたのは春川先生だった。
「そうですけど...」
「高津くんはあの子のこと好き?」
ギクッ
なんなんだ、この人。
まさか、勘づいたのか?
いや、俺保健室くるの2回目だし、
さっきの様子を見て、俺が片思いしているなんて
思える要素なんてなかったはずだ。
「いや、特に...。まあ、他の女子よりかは、仲良い方ですけど。」
「なーんだ、図星なのね。」
俺は否定したのにも関わらず、春川先生は俺が白石のことを好きなんだと見破った。
だけど、それよりも、俺はその時の春川先生のつまんなそうなその言い方に疑問を抱いた。
「なんで、そんなこと聞くんですか?」
「だって、あなたって、モテるって有名でしょ。
モテる男の子ってどんな子が好きなのかなーっ思ったら意外と地味な子がタイプなのね。」
「まあ、俺の片思いですけどね。
って、俺なんでこんなことあなたに話してるんだろ。そろそろ戻っていいですか?
どうせこれ書かなくてもいいやつなんでしょ?」
俺がそう言うと何が面白いのか春川先生は突然笑いだした。それも大胆な笑い方。
「あはは、あなたって私といても全然何も感じないのね。もう猫かぶるのやめるわ。
私、あの子のこと、
大嫌いなのよね。」
俺は初めて女の怖い部分を見せられた気分だった。
「あの子って、白石のことですか?」
「うん、そーよ。
ああやって、誰からにも愛されて
私が手に入れられなかったものはあの子が全部手に入れてるの。」
「それ、どういうことですか?」
「あの子、いつも制服の胸ポケットに青色のボールペンさしてるでしょ。
あれ見ると、たまらなくあの人の顔が浮かぶの。
私、本当に大嫌いなのよね。
青色が。
あの人の部屋にいると誰からかに見られている感覚だった。
落ち着くなんて全くの嘘。
あの人の車が青色だったのを知った時、まだこの人はあの子のことが大好きなんだなって思い知らされた。
別に私、彼のことなんて好きなつもりかったの。
でも、私を好きっていいながら、
青色のものばかりを集めるあの人をみると、
なんで、私のものにならないのよって
初めて自分にどうしようもならないことが起きて悔しいのよ。」
彼女はそう俺には訳の分からないことばかりを話し続けた。
怖いと思っていたけど、
なんだか彼女の表情は悲しそうだった。
そしてふと、思い出した。
青い車...
「その彼って...もしかして、浅井先生.....?」
すると彼女は
悔しそうな顔をして
「そうよ」
とつぶやいた。