青春の蒼い花
同居人
放課後
放課後になった。
たく兄との突然の再会にまだ頭が混乱している。
まだ教室では女子生徒たちがたく兄の周りに集まっている。
私は彼女たちの間をうまくすり抜け、教室をあとにした。
「し、白石さん!!」
突然後ろから誰かから呼び止められた。
振り向くとそこにいたのはたく兄だった。
少しづつこちらに近づいてくる。
「蒼衣、今日部活ある?」
白石という慣れない呼び方をされたあと、二人だけが聞こえる距離になると、蒼衣に戻る。
たく兄の質問よりも、私はその事が嬉しくて答えることを忘れていた。
「あっいや、部活はないですけど…」
急いで答えると、途中からタメで話すねことに不安を覚えた。
たく兄と話すのは本当に久しぶりだし、あんなことがあったし、実習生と生徒の関係である。自然とそんなことが頭を過ぎり、つい敬語になってしまった。
「なんで敬語なんだよ」
クスッと笑うたく兄。
笑った顔はあの頃のままで、可愛かった。
「だって、話すの久しぶりだし、
…たく兄、大人っぽくなってるから」
「大人っぽくじゃなくて、
もう大人だよ。21だからね。」
なんだ。普通に話せるじゃん。
たく兄が引っ越す前の一週間は、失恋の辛さと悔しさと、恥ずかしさでたく兄に会うことを避けていた。
たく兄がいなくなる火曜日の朝も私は見送ることもせずに学校に向かった。
たく兄には申し訳ないことをしたよね。
「てか、蒼衣のほうが大人っぽくなっただろ。」
そう言うとたく兄はあの頃のようにその優しい手で私の頭をポンポンと撫でてきた。
この心地良さにうっとりしてしまいそう。