青春の蒼い花

たく兄の部屋は私の向かいの部屋になった。


お父さんが使っている部屋で、長期出張のためほとんど物はなく、たくさんあるたく兄の荷物でいっぱいになった。



たく兄が整頓をしている間に、私とお母さんで夕飯の支度をした。


おかずを並べ始めると、たく兄は作業が終わったようで二階から降りてくる。


それと同時に玄関のドアが開く音がした。



ガチャ


「ただいまー」


お姉ちゃんが帰ってきたんだとすぐに思った。

お姉ちゃんはたく兄が来ていることを知っているのかな?


そんなことを思いながら、廊下に出るドアから姉が現れるのを待った。



やけに姉の登場は遅かった。


不思議に思っているとドアが開いた。



「げっ、やっぱりたく兄いるし。」


現れたのは明らかに怪訝な顔をする姉だった。


「玄関に男ものの靴があって、なんか嫌な予感したんだよね。どういうことよお母さん。」


お姉ちゃんは何もしらなかったようだ。私のように母に問いただしている。

けれど、私の時とは違い、姉は物凄く怒っているようだ。

「だって、たく兄が一緒に暮らすなんて言ったら菜摘、怒るじゃない。」


お母さんが困ったようにいうと


お姉ちゃんは目と口を大きく開け言った。


「はあああ!???
一緒に暮らす!???意味わかんない!!
この人と!!???無理だからね!!?」



お姉ちゃんは昔からたく兄のことが嫌いだ。

なんでかははっきりと聞いていないし、聞いても「とにかくあいつはクズだから」としか言わなかった。



何があったのかは知らないけど、お姉ちゃんのたく兄嫌いは相当なものだった。


それに比べたく兄は全くこたえていないよで


「相当俺って嫌われてるみたいだね。俺、菜摘になにかしたっけ?」



優しい表情であった。


姉にどんな酷いことを言われてもたく兄が姉に冷たくすることはなかった。


私と同様に優しいお兄ちゃんをしてくれている。


「自覚がないのがクズいのよ。その面剥がしてやりたい。」



たく兄に裏があるって言いたいのかな?



たく兄が実は悪い人…?



そんなの全然想像つかないし、

私たちにいい顔するメリットなんてないはず。



だからそれはお姉ちゃんの勘違いで、たく兄は根っからの優しい紳士なお兄ちゃんだと私は信じている。

信じているというか、そうとしか思えない。





< 26 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop