青春の蒼い花
誘惑
白衣の女
「なあ、白石、
お前、春川先生って知ってるか?」
休み時間になって、高津が似合わない真剣な顔で話しかけていた。
「え、うん、知ってるけど、どーしたの?」
「いや、…気になっただけ。」
なんだか話ずらそうに急に視線を外すから、何かあるのかなっと気になった。
春川先生といえば、美人の保健の先生で有名だ。
生徒からも先生からも人気で、
ゆるふわな感じは女子からも好評価だった。
「もしかして、高津ってああゆう人がタイプなの?」
「ちげーーよ」
あんなに顔を背けていたのに慌ててこっちを向いてくる。これは確定だな。
「いいよ、照れないでよ、
誰にも言わないから!」
「ちげーーって!」
顔を真っ赤にする高津をみると、いつも馬鹿にされている私が主導権を握っているようで優越感に浸った。
「もう何怒ってんのさ~
分かるよ、あんたの気持ちも。
春川先生ってほんと美人だよね~。
ふわふわしてて、優しいし。男子生徒や先生たちのファン多いらしいよ。」
「詳しいな白石」
「何言ってんの?こんなの当たり前だから。高津って本当にこういうの鈍いよね。」
これじゃ、本当に好きってわけじゃないのかもしれないなあ
面白くない
ため息をついて見せた。
「うるせーよ。
でも、春川先生って人、昨日初めて会ったんだけど、なんか普通じゃねえっていうか…」
「まあ普通じゃねえってくらい美人だよな!
あと、胸がでかい!!はははっ」
げっ、
いつの間にか私と高津の間には長瀬くんがいた。
高津には慣れたけど、私は男子がやっぱり苦手だ。
とくに長瀬くんみたいなやんちゃ坊主は。
だから、いつも明日香が守ってくれる。
「ちょっと下品な話しないでよ!
私の耳まで届いてきたんですけど!!」
「なんだよ、僻みか?」
「僻みってどういうことよ。」
「自分が…ふっ…貧乳だからって、ぷふっ」
「長瀬~~!!!」
パシンと明日香が長瀬くんの背中を思いっきり平手打ちした。
本当に痛そうな音だ。
この二人のやりとりをみると、
私と高津なんてかわいいもんだと思える。
たまに引っかき傷までつけられているというのに、こりない長瀬くんは大分明日香にハマっているのだろう。
ビンタされても、引っかかれても、
痛そうな顔をしては嬉しそうに彼は
相当なドMか、本当に小学生の好きな子にちょっかい出しちゃう可愛い男の子だ。
どちらかというと後者だろう。
明日香も明日香で、無視すれば済むのに
こうして長瀬くんの相手をしてあげているんだ。
そのうちこの二人は出来上がってしまうだろう。
私がニタニタと笑って二人を見ていると
明日香にバレて睨まれてしまった。
「何笑ってんのよ、助けてよ蒼衣!」
「大変だね、明日香」
「他人事だね」
「だって、長瀬くん扱えないもん。」
「私はあんなやつ関わりたくないんだけどね!!」
意地っ張りな態度をする明日香も明日香で
好きな男の子前では強気になっちゃう女の子のようで可愛かった。
「なになに?俺の話してんの?」
「黙れ!散れ!」
「そろそろ退けろよ。チャイムなるぞ。」
「うぃーす」
騒がしかった休み時間はあっという間に過ぎていき、二限目が始まった。