青春の蒼い花
胸騒ぎ
「たく兄、おかえり!」
「おお、ただいま」
ポンポン
最近、我が家の玄関先は明るい。
それはたく兄がやって来てからで、
私がいつも彼が帰ってくると出迎えるようにしている。
たく兄と再会するまでの私は
どちらかというと地味な方で
暗い性格をしていたと思う。
でも最近は明日香にも「なんか変わったね」とか「急に明るくなったし、肌ツヤも増して…もしかして恋!?」なんて言われる。
いつか明日香に恋愛相談したいなあと思うけど、相手が先生だなんて恥ずかしくて言えないや。
コンコン
ベッドでゴロゴロしながら考え事をしている最中に、ドアをノックされた。
「明日香、入っていいか?」
ドアの向こう側にいるのは、どうやらたく兄のようだ。
私は慌てて起き上がり、ベッドの上に座った姿勢をとった。
「う、うん!いいよ」
ガチャ
部屋に入って来たたく兄は、スーツから着替えてパーカーにスエットというラフな格好に変身していた。
そしてベッドに腰をかけ、私の横に座った。
「どうしたの…?」
「いや、蒼衣が今日体調悪かったって聞いてな?大丈夫かなーって」
「え!…うん、もう大丈夫」
心配して来てくれたんだ…。
なんか、嬉しいな。
「それでも、俺の授業に出てくれたんだろ?ありがとうな」
ポンポン
「ううん!たく兄の授業のときは元気だったよ!」
なんだか逆に生理痛でよかったなんて思えてきちゃった。
痛くて辛くても、その分、頑張ったねって
たく兄が褒めてくれるんだから、私は幸せだよ。
「でも…、女子って大変だよな」
うん…、そうだね。
って……なんで、たく兄が知ってるの?
私が生理痛でお腹が痛かったって…
だって、そのことを知っているのは
明日香と春川先生ぐらいのはず。
お腹が痛かったのは前の授業で休んだ理由だから知っていてもおかしくないけど、
なんで生理痛だって…
もしかして明日香から聞いた?
いや、でも明日香がわざわざたく兄に私が生理痛だなんて言うはずがない…
じゃあ、なんで
「ねえ、たく兄…」
「お風呂できたわよ~~!」
私が話を切り出したとき、それを遮りように下の階からお母さんの声が聞こえてきた。
「俺、先入るよ」
すると、たく兄は部屋を出ていった。
結局聞けなかった。
気にするようなことじゃないけど、
でも、どこか引っかかった。
少し感じるこの胸騒ぎは一体何なのだろう。