青春の蒼い花
7限目のLHR。
今日はその時間を使って、どうやら
劇の役決めをするようだ。
台本はすでに実行委員が考えてくれているらしい。
黒板に書き出されていく役職。
私はセリフの少ない役か、裏方をしようと思っていた。
「ねえ、蒼衣は何にする?
私、役がいいんだけど」
明日香が私の席にやってきた。
「それじゃあ私も役にしようかな」
明日香は料理部だけでなく、演劇部にも入っている。演劇こそ、明日香の本職みたいなものだ。
明日香は周りの推薦もあり、主役のベルに決まってしまった。
「私、浅井王子見たい!!」
「私も!!」
「いやー、俺は高校の時に王子はしたからなー。
あ、俺はガストンしたいかなー。悪役ってしてみたかったんだよ。」
クラスのどこからかそんな声が聞こえてきた。
私はそのことから気を逸らすために某隣人くんに話しかけた。
「高津は何にするの?」
明日香はすんなり決まってしまったが、私はまだ悩んでいる。
でも、次々に名前が埋まっていく黒板を見ていたら、自分にちょうど良いのは町人かなと思った。
「俺はあんまセリフないのがいいかな~」
高津はあまり興味がなさそうに、黒板を見ながら言った。
黒板の周りにいる人が減ってから、私は町人と書かれた下に自分の名前を書いた。
同じ頃に高津も黒板にやってきて、
私から貸してと言ってチョークを奪い
私と同じ町人の下に名前を書こうとした。
「え!待ってよ高津くん!」
その様子を見ていた麻生真由美が、呼び止めた。
高津は手を止め、後ろを振り返る。
「高津くんには、王子役してもらいたいんだけど、ダメかな?」
「え?俺が?なんで?」
「高津くんにぴったりだと思うの!」
麻生さんの言葉に賛同するように、クラスの女子たちはうんうんと頷く。
高津は困った顔をしていたが
「他にしたいやつがいないんなら」
そう言った。
周りを見渡しても、やりたいという人は出てこない。
じゃあ、高津が王子と決まりかけた時、
ある生徒の一言により、
野獣役と王子役を分けた方がよいのではと提案した。
無論、女子達は高津に王子役をやってほしいと言った。
でも、高津は
そんなの出番最初と最後だけじゃん、
そう言って野獣をすると言い張り、
結果、話し合ったうえ、
女子も納得いくように、
高津が野獣、たく兄が王子役となった。
そして、主人公ベルは明日香になった。