青春の蒼い花
「ねえ~先生~
そろそろ席替えしない~?」
それはSHRで麻生さんが放った言葉だった。
彼女の方を見ると、私に目を合わせてきてニッと意地悪く笑った。
クラスメイトたちからは同意の声が返ってくる。
高津は興味なさそうな顔をしていた。
すぐにくじ引きをした。
私は13番、教室の前のドアからすぐの席。
みんなが新しい席に座り、教室を見渡すと
高津の席は私と正反対の窓際の1番後ろの席。
その近くには麻生さんといつも一緒にいる阿川さんと吉永さんがいて、
少し離れたところに麻生さんがいた。
チャイムが鳴り、みんな教室から出ていく。
そんな中、麻生さんたちは高津の席に集まっていた。
「麗美が羨ましい~、高津くんの隣なんて!結花も同じ班だしいいな~」
「何言ってんの、麻生。俺、そんなアイドルキャラじゃないよ?はははっ
阿川、これからよろしくな。」
「うん!よろしくね!
それに真由美も、
そんな席離れてないでしょ?
高津くんと同じ列じゃない。」
仲良さそうに話す声が聞こえてきた。
なんだか気に食わない。
このモヤモヤして、イライラする気持ちはなんなんだろう。
麻生さんたちが嬉しそうにしてるから?
高津が麻生さんたちの裏の顔に気づいていないから?
それとも何?
私は麻生さんたちと高津が仲良くしているのに怒ってるの?
何よ…
それじゃあ、麻生さんたちの言うように
私は高津を独り占めしようとしてるみたいじゃない…。
私は黙って教室を出た。
『高津くんに近寄んないでよ!!』
その言葉だけが頭にガンガンと響き渡る。
「おい」
……
「おい、おい!白石!!」
「……え?」
誰かに肩を捕まれ振り向いた。
その誰かは高津だった。
私の顔を見るなり呆れたようにため息をついた。
「またお前はボーッとしながら
のろまに歩いてんのな」
またちょっかいを出すようにからかってくる高津。
「ふふ…そうだね…」
私はそんな彼を見ると悲しくなった。
そんな私の様子に高津は違和感を感じているようだった。
いつも降り掛かってくる私のパンチが来ないからだろう。
彼は私の肩から手を話した。
私はその隙に靴を履き替え
「じゃあね」
振り向くことなく彼にそれだけをつげた。
もう、
二度と今までのように
話すことはできない。
私は麻生さんたちに白旗をあげた。