青春の蒼い花


私は姉の影響で姉と同じ演劇部に入部した。


物語が大好きだった私は、

演劇にハマった。



入部して一年の間は本当に楽しかった。




でも、二年生になって


三年生と最後の劇の舞台に、


後輩からは私だけがセリフの多い役を与えられた。



先輩や先生たちからは白石が妥当だろうと言われ、私は正直に嬉しかった。


でも、練習中の舞台裏で、

同じ二年生の子たちが、私の悪口を言っているのを耳にした。


「ほんと、最近調子のってるよね、白石さん。

対して可愛くもないのに、舞台で目立とうとしちゃって。」



胸が痛かった。



でもその瞬間私は彼女たちを少し下に見た。


ただの僻みじゃない。


あんたたちの演劇が下手だからじゃないって。





だから私はだれからも文句を言われないくらいに練習を頑張った。




三年生最後の舞台はシンデレラ。



私は魔法使いの役だった。



シンデレラとかぼちゃに魔法をかける


それだけの演劇に全力を注いだ。




その結果、劇は大成功。


「二年生であの演劇。凄かったよ、白石。
次の団長はやっぱりお前だな。」


先生からもそう言ってもらえた。



だけどその日の打ち上げで



席を外し、トイレに行っている間に
嫌な話を耳にしてしまった。



「ねえ、あの子、蒼衣ちゃん。

今日の劇、すごい頑張っていたよね。」



私が一番奥のトイレを使っている間に入ってきたのは、3年生の先輩たちだった。



「なんか、すごい張り切ってるって感じ。

あの子でしょ?次の団長。

なんか悔しいっていうか、気に食わないよね。」



「わかるー!
今日の劇だって、魔法使いの演技が凄かったって客席から聞こえてきた時は、
主役の私の面子が立たないって

いくら上手だからって、こっちの気持ちも考えてほしーわ。」



ガチャっとドアが閉まる音がするまで、
私はその場から震えて動けなかった。



同級生に言われた時はなんとも思わなかったけど、


先輩にも妬まれて、あんなふうに思われていたと思うと、苦しかった。



私はその後、戻ることなく家に帰った。





三年生が引退し、



新しい団長と副団長を決める会が開かれた。




予感はしていたが、


顧問の先生からの指名で団長には私が選ばれた。



以前の私なら、嬉しくてたまらなかっただろう。


だけど今の私には、逃げ出したかった。



みんなの拍手も、怖かった。



「白石さんが団長だとやる気なくすよね。」

「たしかに。みんながみんな白石さんみたいにできるってわけじゃないんだから。」



甘えきったその態度を叩き直してやりたかったけど、嫌われたくない

その気持ちが大きかった。



後輩は私を慕ってくれた。



それでも、たまに厳しく指摘する私より
他の先輩たちに後輩たちは集まっていった。


部活を辞めたい。



何度もそう思った。




それを顧問の先生に告げても
困った顔をされる。


「団長のあなたが居なくなったら困るわ」


先生に全て話した。

もう演劇が楽しくないとまで言った。



それでも辞めさせてくれず、対処もしてくれなかった。



もう、見返そうだなんていう気力も無くなっていた。



そして最後の演劇を迎える一週間前、



いつものように私は壇上を使って一人で練習をしていた。


最後の演劇だ。


最後の最後なんだから、今までの辛かったことを忘れて、演劇を楽しもう。


そう思って頑張った。



だけど、少し疲れて壇上から降りようと、舞台裏の階段を下っているとき




ドンっ



ガタガタガタッダンッ




私は誰かに押されて階段から落ちた。




そこまで段数はなかったから、意識はしっかりあった。



階段上にいたのは、

演劇部の女子数人が並んでいた。



何すんのよ!


と怒鳴ってやろうと思い、

立とうとした。




イタッ



右足がジンジンと痛んだ。




ガタン

体育館のドアが開く音がすると

彼女たちは私のもとへ駆け寄ってきた。



「先生!!白石さんが!!


階段から落ちちゃって!!」



慌てて駆け寄ってきた先生は
私の右足を見るなり



「これじゃあ…



一週間じゃ間に合わない…」





その後すぐに救急車で運ばれた私は、

お医者さんから、全治2カ月という診断結果を告げられた。







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