青春の蒼い花
「じゃあ、蒼衣は最後の舞台に立てなかったの?」
「うん…」
辛い過去を全て明日香に話した。
もう吹っ切れたつもりでいた過去だけど、思い返すとやっぱり辛かった。
明るくて元気が取り柄だった私からそれらが消えて、空っぽの私ができあがった。
でも、こうして高校生にやってからは
明日香と友達になれて満足している。
だから私は独占欲が強くなっていて、やっとできた絆を切り離すことができなくなっている。
ちらっと高津を見ると野獣の格好で友達と騒ぎあっていた。
最近は遠目であいつを見ることが多くなっていた。
前まではいつも近くにいて、
いろいろなたわいもない話も楽しく話していたのに、
席替えをしてからは全くと言ってもいいほど喋っていない。
高津から話しかけられることはあったけど、麻生さんたちの目が気になって、逃げてしまった。
「また見てる」
「え?」
「今日はもうこれで10回目。
最近高津くんと話してないみたいだけど、何かあったのあんたたち。」
明日香は勘が鋭い。
いや、当たり前かもしれない。
毎日高津と話していたのに、今じゃ一言も話していないんだから。
でも私はその問いを「ちょっとね」と言うだけで誤魔化した。
明日香も深入りはしてこなかった。
「ふ〜ん。あんたたちらしくないから仲直りしなよ。」
それだけだった。
ごめんね、明日香。嘘ついて。
でも言えないよ。
麻生さんたちのことを言ったら、
明日香は間違いなく彼女たちに噛み付くだろう。
でも、それじゃあ、明日香にも危険が及ぶ。
明日香をそんな目に合わせたくなかった。
それに悪いのは私なんだから。
友達だと思っていたのは私だけで、
あいつにとって私は
ただのクラスメイトの一人に過ぎない。
キラキラしたその笑顔をみんなに見せていることが何よりもの証拠だ。
私はその笑顔を勘違いしていた。
まるで私とあんただけの世界があって
誰も理解してくれない男女の友情
そんなものはなから存在しないんだ。
私が一度彼を手放しただけで、
彼はこんなにも遠くに行ってしまった。
もう私の隣に戻ることはない。
私と目が合うと彼は私から目を逸らした。
もとからこんなもんだ。
彼は私とは違う。
キラキラとした生活を送る王子様で
私はただの町人
いや、それ以下の名前もない影みたいなもの。