エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
悠斗さんの聖さんへの嫉妬や憎悪は日に日に強くなっていてふたりの関係は簡単には修復できないところまで来ているのだと悟った。

聖さんの本心はどこまでいっても悠斗さんには伝わってはいなくてそれがすごく悲しくもどかしい。

「悠斗さん、あなたは聖さんを誤解してます。聖さんはあなたが思っているよりもご両親や弟妹の事を考えてます。あなたの邪魔をするつもりなんてまったくないのになんであなたは……」

「泣き落としですか。本当に怖い女ですね」

聖さんと七瀬さんの関係を知って、そして埋まらない深い聖さんと悠斗さんの溝を突き付けられて、いろいろな感情が私の中を駆け巡り、それが涙として頬を伝っていく。

「紗凪さんが聖兄さんに捨てられるのも時間の問題。ならばこの僕に協力しませんか?聖兄さんを蹴落とすのに力を貸してくれませんか?」

「……な、にを言って」

「どうせ紗凪さんは聖兄さんのことなど愛していないのでしょう? 聖兄さんも同様、紗凪さんのことを愛していない。もしも紗凪さんが僕に協力してくれるならば、そしたら実家への融資は継続しますよ」

そんなの分かってる。聖さんと私は契約結婚なのだから。聖さんが私を愛していないことなど痛いくらいに分かっている。それなのに。

抱いてはいけない、超えてはいけない“その感情”の境界線を、私はーーーー

「悠斗さんに協力など絶対にしませんから! 私は、私は……」

超えてしまっていたんだ…。

“聖さんの事が好き”

私が胸の中でそっと呟いたその言葉は、きっと誰にも届かない。
< 113 / 180 >

この作品をシェア

pagetop