エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
玄関のドアを開けて灯りを付けてリビングに足を進めれば、そこにはいつも部屋に漂う聖さんの優しく爽やかな香りがして胸がギュッと苦しくなった。

いったい聖さんと京極さんは何を話すつもりなのだろうか? なんだが胸がそわそわして落ち着かない。

何かをしようとしても何も手に付かない状況で、ひとまず言われたようにお風呂に入ることにした。

熱いシャワーの飛沫が冷え切った私の身体を刺激する。身体の中を流れる血液がドクンドクンと波打つ感覚がいつもよりも遥かに感じられるのは身体が冷え切っていたからという理由の他に私の中で幾ばくかの緊張感が漂っているからだ。

この後に待っているであろう聖さんとの話し合いで、私は自分がどうすべきか、本当のことを話すべきなのか迷っていた。

京極さんにはちゃんと聖さんと向き合った方が良いと言われたけど、契約結婚のこの身で胸の奥底にある私の本音を口にしてしまえば、聖さんに愛想を尽かされ、この関係が終わるかもしれない。

でもこのまま苦しい関係を続けるくらいならいっそのこと、関係を終わらせてしまった方がお互いの……いや私のためなのかもしれない。

そんな相反する悩みの答えはお風呂を上がってからも出なかった。
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