エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「これだけは先に言っておくが、莉乃とは幼なじみという事実はあるがそれ以上は何もない」

「え?」

私が一番知りたかったその答えが不意打ちに聖さんから返ってきて面を喰らった。

「……でも私、聖さんと七瀬さんの会話を事務所で聞いてしまったんです。七瀬さんが今でも前みたいに戻れることを願ってる、と。聖さんも、俺もそうなりたいと言って……」

「それは悠斗と俺の関係がぎくしゃくしだした頃に莉乃がその変化に気付いてね。莉乃はお父さんの仕事の関係で引っ越してからも俺らのことを気にかけていたらしい。それで相談中に仲直りができたのかと聞いてきたんだ」

「……それで聖さんはなんと答えたんですか?」

「今もあまりうまくは言っていないと答えた。そしたら莉乃が悠斗と俺が昔みたいに仲が良かった頃に戻れることを願ってるよ、と言ってくれたんだ。だから俺もそうなりたいと思っていると答えた」

「……え? それって」

「つまりは俺と莉乃が元サヤに戻るとかそういう話ではないということだ」

「そ、うだったんですね」

「悠斗が言うように確かに実家で今日、莉乃に会っていた。それはうちの事務所に相談に来ている間、蒼弥くんをうちの母が蒼弥くんを預かると言い出したからだ」

私は何という思い込みをしてしまっていたんだろうか。

「相談が済んだ莉乃と共に実家に俺も顔を出した。そして莉乃が蒼弥くんを引き取って帰ろうとしたら母が少し上がって行ってと言い出して。莉乃を家に上げて軽くお茶を飲みながら三人で少し話たがそれ以上は何もない。悠斗が紗凪に嘘を吹き込んだのはどうにかして紗凪と俺の仲を引き裂きたかったのだろう」

「……私、すごい誤解していたんですね。ごめんなさい」

勝手に誤解をしてその上、みんなに迷惑をかけてしまった自分の行動を酷く後悔した。思わず、視線を下に逸らしたそのとき。
< 125 / 180 >

この作品をシェア

pagetop