エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい

「もしもし…？　今から？　それは難しいかと。だから後日、改めて……」

どこか苛立ちを含んだ聖さんの声が耳に届いた。

「少し待ってもらえますか？」

暫くすると電話口の相手にそう言って聖さんが保留ボタンを押してこちらを振り向いた。

「どうしたんですか？」

「紗凪、申し訳ないが今から少し実家に付き合ってもらえないか？　父から話があるらしくて。断ったんだがあの性格だから言い出したらまるで聞かなくてね」

電話の相手はお義父さんだったらしい。

「私は大丈夫ですよ。お義父さんがそう言ってるのならば実家に行きましょう？」

「本当にすまない。まったく困ったものだ。すぐに話を切り上げるから申し訳ないが付き合ってくれ」

「分かりました」

そしてゆっくりとアクセルを踏んで実家方面へ車を走り出させた聖さん。願わくば悠斗さんとはあまり顔を合わせたくはない。