エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「来月、我が東條物産の創立記念パーティーがあるのは聖も分かっているだろう?」

「はい」

「今年、我が社は創立三十周年という節目の年だ。だからいつもよりも多くの方を招いて盛大にやるつもりでいる。そこに聖と紗凪さん、ふたり揃って出席してもらいたい」

「お言葉ですが、前にも言ったように俺ひとりで参加する予定でいます」

聖さんが間髪入れずにそう答えたけれども、お義父さんは納得していない様子だ。そしてそんなお義父さんと視線が交わり、戸惑ってしまった。

「紗凪さん、結婚式の前にいろいろな方に会って名前と顔を覚えながら挨拶を済ませておいた方が結婚式当日、より良いおもてなしができると思わないか?」

「だから父さん、それは」

「聖、私は今、紗凪さんに話をしているんだ。紗凪さん、東條家に嫁いだからにはこういうものに率先して顔を出してもらいたいのだがね。美玲が留学すれば、なかなか皆が揃って参加することができなくなるから今回は特にお願いしたいのだよ」

この雰囲気からすると私に拒否権というものはないらしいと推測できる。それに東條家に嫁いだからには伝統やしきたりというものがそれなりにあって聖さんの妻になったからにはそこを蔑ろにはできないとも思う。

「聖さんと一緒に参加させてください。ご挨拶をさせていただきたいと思います」

いろいろと考えた末の私の結論がそれだった。

「紗凪さんならそう言ってくれると思っていたよ」

私の答えを聞いてご満悦な様子のお義父さんの前で聖さんが盛大なため息をついた。
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