エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「ならば父さん、これだけは約束して下さい」

「なんだね?」

「皆様の前で……例えばステージ上での大々的な結婚報告、お披露目はしない。ただ、俺と紗凪が来賓の方一人ひとりに回ってご挨拶をする。そういう形で良ければふたり揃って顔を出します」

「ああ、分かった。約束しよう。聖は本当に用心深いな」

「父さんのことだから釘を刺しておかないとそういうことをやりかねないと思ったので。紗凪は俺の妻であって東條物産の見せ物ではない。それだけは言っておきますね」

「そうか、まぁいい。ふたり揃って来てくれるのならばね」

「まぁ、皆が揃うことになったのだから良しとしましょう? ほら、弥一さんも聖さんもそんな怖い顔をしないで。あ! 紗凪さん、今度一緒に当日着るお着物を選びましょう?」

「あ、はい」

「紗凪さんなら可愛らしい桜色のお着物が似合うと思うわ。楽しみね」

ピリピリとした雰囲気を打ち破ったのはやはりお義母さんで、正直その優しさがありがたいと思った。

そんなお義母さんの助け舟もあって、それ以降はお義父さんと聖さんが険悪な雰囲気になる事はなくて和やかな時が過ぎていった。

「ではそろそろ帰るよ。明日も仕事があるから」

ひと通り話が終わり、お義母さんが出してくれた夕飯を食べ終わった頃、聖さんがそう言い出して私たちは東條家を後にすることにした。そして車を停めたガレージへと向かったそのとき。
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