エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「僕からも聖兄さんにひとつだけ忠告をしておきます」

「忠告?」

悠斗さんのその言葉にピタッと足を止め、不敵な笑みを浮かべる悠斗さんの方へと視線を送った。

「目に見えるものだけが真実とは限らない。思いもしないところに落とし穴があるかもしれませんよ?」

「どういう意味だ?」

「何れ分かる時が来ますよ。それでは僕はこれで失礼しますね」

軽く会釈をして私たちの元から去って行った悠斗さん。

「紗凪、大丈夫だ。何があっても必ず紗凪のことを守るから。さぁ、帰ろう?」

「……はい」

差し伸べられたその手をギュッと握って、心の中に芽生えた何とも言えない不安な気持ちに蓋をして私は帰宅の途に就いた。

そしてその悠斗さんの意味深な言葉の本当の意味を聖さんと私が知るのはそれから少し経ってからのことだった。

「……いよいよ最終局面か。最後に笑うのは聖兄さんなのか? いや、それとも……」

聖さんと私がその場を離れて数分。東條家の玄関で不敵な笑みを浮かべながら空を見上げた悠斗さんの言葉は私たちには届かない。
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