エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「紗凪さん」

私を呼ぶ女の人の声がして私は反射的にそちらを振り向いた。

「美玲さん」

私の名を呼んだのは聖さんの妹の美玲さんだった。淡い黄色の着物にふんわりとしたシニヨンスタイルでまとめられた髪型が美玲さんの雰囲気に合っていてその美しさに目を奪われた。

「美玲さん、すごく綺麗」

「ありがとうございます。なんだか褒められると照れちゃいますね」

私の前で美玲さんがはにかんだ。

「あ、そういえば! コンシェルジュが紗凪さんの事を探してましたよ?」

「私のことをですか?」

「はい。パーティーが始まる前に聖お兄様抜きでお父様が紗凪さんとふたりきりで話したいらしくて。紗凪さんを呼んで来るようにコンシェルジュに頼んだみたいです。さっきヘアセットをしている時にコンシェルジュに紗凪さんがどこにいるか分かるか聞かれたんです」

「そうだったんですね」

何やらまたややこしい事を言われる予感がした。だけれどもこの事を聖さんに話したらきっとまた一悶着が起きる気がする。さてさて、どうしようか?

ひとまず母と電話をしている間、なかなか返ってこない私を心配したのか聖さんからラインが入っていた事に気がついた私はこれ以上心配させないように、“直に戻りますから心配しないで下さい”そう返信をした。

「美玲さん、お義父さん今どこにいるか分かりますか?」

そして、ひとまずひとりで話を聞きに行くのが揉め事にならない最善の策かもしれない、そう思った私は美玲さんにそんなことを尋ねていた。
< 163 / 180 >

この作品をシェア

pagetop