エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「美玲はずっとそんな風に思っていたのか」

「ええ」

「それは誤解だ。父さんは美玲のことをいつも気にかけていた。美玲は知らないが、父さんはどんなに忙しくてもいつも美玲のピアノのコンクールをこっそり見に行って応援していたし嬉しそうに友人や会社の人に美玲の自慢話をしたりしていた」

「……お父様が?」

「ああ。それに悠斗だってここまで美玲に協力したのは美玲の心が壊れていくのを見ていられなかったからだろう。なんとかしてまた美玲に心から笑ってほしいと願っていたからだ」

「……」

「美玲は紗凪が私欲のために俺と政略結婚したと思っているがそれも誤解だ。この結婚は俺から持ち掛けたんだ」

「え? 聖お兄様から紗凪さんに?」

「ああ。俺がこの結婚を断れば、その矛先は悠斗ではなく美玲にいく。そうしたら美玲は好きでもない相手と見合いをさせられピアニストの夢を叶えられなくなる。だから紗凪に協力を頼んだ。一年後には別れる約束をして。だけど俺は紗凪に惹かれ、今は紗凪を愛している」

「……そんな。それじゃあすべて私が勝手に誤解してたということ?」

美玲さんがそう呟いて崩れるようにソファーへと腰を落とした。
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